『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(1992)1〜6話感想まとめ

 

第1話「誕生」

第2話「復活」

第3話「戦え絶望の大地」

第4話「甦れ伝説の武器」

第5話「怖〜いナゾナゾ」

第6話「立て!!大獣神」

 


第1話「誕生」


脚本:杉村升/演出:東條昭平


<あらすじ>
惑星ネメシスに封印されていた魔女バンドーラたちが復活した。バーザは地球を救うため、伝説の英雄・ジュウレンジャーを復活させようとする。


<感想>
前作『鳥人戦隊ジェットマン』から作風がガラリと変わり、タッチが随分90年代らしくなった「ジュウレンジャー」、OPから非常に凝った映像です。
OPの戦士紹介の映像が赤→黒→青→黄→桃と従来のものに戻しつつ、前作までのSF要素を一切廃して徹底した「ファンタジー」へと振り切ることで大きくガワを変えたか。
恐竜人類という設定なのに、いわゆる「ディノサウロイド」なビジュアルじゃないのは子供が怖がってしまい感情移入できないことと、当時の技術の限界によるものでしょう。


内容としては徹底的に子供向けに全振りしていて、これも前作「ジュウレンジャー」との意識的な差別化の結果とは思われますが、ドラマ性よりも娯楽性重視という感じ。
ただ、いわゆる昨今の「ゼンカイジャー」「ドンブラザーズ」に比べると非常に見やすくスッキリして見えるのは今見直すとかえって新鮮に感じられます。
単純に尺が短い(当時は精々17分程度だったからなあ)というのもあるでしょうけど、玩具販促重視ながらに無理して巨大戦まで詰め込んでいないのはよかったです。
私はちょうど90年代戦隊を原体験していたこともあって、やっぱりこの頃のように余裕を持って物語を展開していた時代の戦隊の方が見やすくていいなと。


パイロット監督が長石監督→雨宮監督と来て鬼軍曹と名高い東條昭平監督になったのもその辺りの意識があったのかと思われますが、ひたすらに勢い重視でイベントが流れていきます。
まずは人類が乗ったシャトルがなぜか惑星ネメシスに向けて発射→人類が誤って魔女バンドーラの封印を解いてしまう→バンドーラが自転車を漕ぎながら人類に宣戦布告。
突っ込みどころ満載の流れではありますが、1つ1つだと「なぜそうなるのか?」と思わせてしまう要素を連続してぶつけることでハイペースにボケまくり、かえって違和感をなくしています。
また、バンドーラのキャラを曽我町子氏、バーザのキャラを多々良純氏という大御所2人が演じることで一定の重厚感を持たせており、きちんと芝居として成立させているのは見事です。


しかし、だからこそ気になるのはメインのジュウレンジャー5人がイマイチパッとしないというか、キャラ付けがイマイチ弱く存在感が希薄なのは惜しまれます。
特にプテラレンジャー/メイの千葉麗子はビジュアルは歴代トップクラスなのに、技力が大根というレベルすら通り越した滑舌の悪さなので、感情移入できません。
他の4人も決してそこまで演技達者ではないなりにきちんと「ティラノレンジャー!ゲキ!」と言えてるのに対してメイは「ぷれられんら〜!めい!」と全部ひらがな読みに聞こえてしまうのです。
東條監督ほどの人に演技指導してもらってこのレベルで、しかも年間通してもそんなに成長しないので、この経験を味わうと後のオンドゥル語やら松本寛也やらタカ兄やらが可愛く見えてしまいます。


4人が戦う→捕まる→レッドが助けるという展開は後の「カクレンジャー」のニンジャレッド/サスケも多用していて、更に「オーレンジャー」の1話でもオーレッドがやっていたのですが、杉村脚本×東條演出の十八番なのか。
しかし、ゲキを演じている望月氏もアクションとスタイル自体は文句なしにカッコいいのですが、顔と演技力は中の下、といったところで、前作のネオジェットマンでも存在感が微妙でした。
それからオープニングでも登場している伝説の武器が手に入るのは4話なのですが、ぶっちゃけこの段階で既に持たせておいてもよかったのではないでしょうか。
というのも、変身前が伝説の武器のレプリカながらそれなりに見応えのあるアクションだったのに対し、変身後がレンジャーガンのみというのがあまりにも貧相過ぎます。
新堀さんによるアクションも悪くはないのですが、効果音が「パコンパコン」と大して重くなさそうなので、全然カッコいいと思えず、ここは次作「ダイレンジャー」以降の反省点となっています。


とりあえず撃退はしたものの、スペースシャトルにとらわれた子供達の救出はできずに次回へ、という流れですが、全体的には可もなく不可もなしといったところです。
全体的にはOPの映像などにも出ているように、遊園地のアトラクションのような感じで児童が面白がりそうなセンスオブワンダーをこれ以上なく詰め込んでいます。
しかし、そうした驚きの割りには後半の華々しい見せ場であるはずのジュウレンジャー登場にいまひとつカタルシスが感じられないのが残念です。
名乗りにエコーをかけるのは悪くはないのですが、アクションは変身前の方がむしろ見応えがあったので、むしろ変身しない方が強いのではないか説が浮上してしまいます。


この辺り、前作「ジェットマン」はレッドのみがプロの即戦力、他の4人は素人でまともに戦えないという構成にしていたのは変身前と変身後の違いを強調する意味でもよかったのかなと。
変身前でも強い戦隊の難しいところは、いかにして「わざわざ変身させるのか?」にあるのですが、本作はそのハードルをクリアできなかった模様。
また、別段引っ張るべきでもない人質になった子供の救出を次回に引っ張ったせいでヒーローとしてのジュウレンジャーがイマイチ活躍できていないことになります。
せっかく勢い重視でドラマ性を二の次にするのなら子供の救出はこの段階でやっておいた方がよかったと思われ、総合評価はD(凡作)というところでしょうか。


第2話「復活」


脚本:杉村升/演出:東條昭平


<あらすじ>
シャトルを取り戻そうと必死の5人の前に立ちはだかる、ドーラスケルトン。そして、さらに襲い来るドーラタイタン。そのとき、大地を割って守護獣ティラノザウルスが復活した。


<感想>
冒頭、呑気に本を読んで笑っているダンをボーイが投げ飛ばして叱り飛ばす。


「のんびり本なんか読んでる場合かよ!見ろよ、なんとかあいつをやっつける方法を考えなくちゃダメじゃないか!」
「そんなカリカリすんなよ」
「もう!奪われたシャトルの中には子供たちが居るのよ!?地球の平和を守り魔女バンドーラを倒すことが私たちの義務じゃない!」


ここでお調子者のブルーに年少組ながらもしっかり者のイエローとピンク、とキャラの書き分けがされているのですが、相変わらずメイの演技が酷い^^;
彼女が喋り始めた瞬間に物語のテンションが一気に下がってしまい、急に作品世界に入り込めなくなって冷めてしまうのはどうにかなりませんかね?
前作と違ってドラマ性重視がないが故のキャスティングだったのかもしれませんが、台詞回し自体は悪くないだけにどうしてもキャストの演技力が追いついていないのが勿体無いです。
まあ最新の「ドンブラザーズ」も役者がキャラをものにできていないことが1話では見受けられましたので、この辺りは文句を言っても仕方ないのかなと思うところではありますが。


その後ゲキの口から回想として1億7千万年前の戦いが伝説として語られるのですが、この「過去の戦いからの因縁」という設定はファンタジー戦隊に継承される要素となっていきます。
「ダイレンジャー」「カクレンジャー」「ギンガマン」「シンケンジャー」「リュウソウジャー」はこの要素が強くあるのですが、その原点とも言えるシーンがここです。
それからもう1つ、ゲキがプリンスでメイがプリンセス、他3人がナイトという階級社会が設けられているところも地味ながら大きな設定の変化ではないでしょうか。
「ゲキ、リーダーはあなたなのよ!」などのメイのセリフからもわかるように、初期はおそらくレッドと他4人の主従関係のようなものが構想されていたと思われます。


この設定は本作だと形骸化してしまうのですが、後の「カクレンジャー」の鶴姫や「ハリケンジャー」の御前様、「シンケンジャー」の志葉丈瑠などにこの主従関係の設定が継承されているのでしょうね。
最新作の「ドンブラザーズ」もドンモモタロウと4人の従者たちの主従関係が仕込まれており、ギャグで流されるのか「シンケン」みたいに1年通じてテーマとして描くのか気になるところです。
で、物語は前回の続きでシャトルの中に囚われた子供たちを救出するというものですが、今回は実験的にスケルトンとナイトの怪人と戦うのですが、密度としては正直イマイチ。
まず伝説の武器のレプリカが全部破壊されたことで次回の武器入手へのフラグを立てているのですが、その後結局レンジャーガンで倒してしまうため、むしろ武器入手の必要性はないということに。


その後初めての守護獣・ティラノサウルス登場となり、ティラノレンジャーが乗って戦うことになるのですが、コックピットがメカっぽいのは許容範囲としても、登場にいまひとつドラマツルギーがありません
また、前回の感想では書き忘れましたが、変身がメダルをバックルにはめての「ダイノバックラー!」なのも個人的には微妙で、変身バンク自体も絵としてかっこよくはならず。
うーむ、これに関してはまだ過渡期だったのもあるでしょうが、本作はせっかく児童向けで玩具販促を重視している割には、変身アイテムやロボの登場そのものにカタルシスがないのが残念
せっかくビジュアルから設定から、斬新なものを数々導入しているにもかかわらず、終始このような感じでいまひとつ痒い所に手が届かない出来栄えになってしまっているのです。


つまり、設定紹介と玩具販促は前作に比べてかなり早く2ぐらいのスピードなのに対して、肝心要の物語そのもののスピードがかえって0.5〜1になってしまい噛み合っていません
これは正に前作と逆で、前作は設定紹介と玩具販促はかなり遅いながらに、物語そのものスピードがかなり早かったお陰でこの辺りの噛み合わなさをうまく処理していました。
もっとも、前作「ジェットマン」は80年代戦隊に毛が生えたSFの世界観をベースとしていたために、設定を新たに作る必要がなくその辺りをすっきり簡略化できたからかもしれませんが。
せっかく子供向けに振り切ったのであれば、もっと変身アイテム入手や巨大ロボ登場にドラマ性というか物語を作って欲しいのですが、尺の限界なのかそこまで手が回らなかったのは惜しまれます。


かなりハードルを落として児童世代を楽しませようという試みはOPとEDからも感じられますし、今の戦隊のようにひたすら情報量を詰め込んでいるわけではないので、それだけでも見やすくはありますが。
ただ、ここまでハードルを下げたのであれば、もっと玩具販促や子供向けとしてのアトラクションに注力して欲しいところではあり、そのアトラクションの部分がスカスカになってしまっています。
ティラノサウルス自体もアクションやデザインは悪くないだけに、ごく普通のイベントとして処理されてしまい、そこに劇的な説得力が感じられず消耗品として扱われてしまっている気がしてならないのです。
また、ヴィラン側のバンドーラ一味が凄くインパクトが強く存在感を発揮しているのに対して、ヒーロー側のジュウレンジャーが演技力やキャラ付けが薄味過ぎて存在感を食われてしまってるのもそれに拍車をかけています。


評価は前回に続きD(凡作)といったところで、前作との意識的な差別化には成功しているものの、かといって子供向けとして十分満足できる作りになっているとは言い難い出来栄えになりました。
あっちが立てばこっちが立たずというのは戦隊シリーズに限らずよくあることですが、今後面白くなってくれることに期待します。


第3話「戦え絶望の大地」


脚本:杉村升/演出:小笠原猛


<あらすじ>
神秘の力を持つ伝説の武器を手に入れるため、絶望の大地へ向かった5人。しかし、そこにはバンドーラの罠が待ち受けていた。


<感想>
「新しい武器が欲しい!それもバンドーラと互角に渡り合えるような武器が!」
「ゲキはソード、僕はダガー、ダンはスピア、メイはアロー、ゴウシはアックス!」


冒頭から伝説の武器について議論する5人…ライトな作風ではありますが、さすがは伝説の戦士たちなだけあって、バンドーラ一味への殺意は高めです。
思えばOPの各自の紹介からして、伝説の武器を構えて真剣な表情をしているのですから、ここからもどれだけ凄みのある戦士たちかがわかります。
まあその割には詰めが甘いところもあったりして、一億数千万年ぶりの復活なので、伝説の内容のことを忘れている可能性もありますが。
ギンガマンみたいに組織全員で常に臨戦態勢で準備し、伝説を伝えているとかじゃない限りは難しいんじゃないでしょうかね。


内容は文字通り伝説の武器を手に入れるという試練なのですが……一体これ、誰が何のために用意した試練なんだ?(笑)


ジュウレンジャー5人が各自で乗り越えて、みたいな試練にしてはハードルが無駄に高いですし、どうせ手に入れるのならば最初から装備させておいた方が安全じゃないでしょうか?
まあ本作はコメントにも書かれていましたが、杉村先生自体がRPGを始めゲームが大好きということなので、この当時発売されていたFF5・DQ5への意識も少なからずあったと思われますが。
武器入手はいいのですが、試練自体が「手段」ではなく「目的」になってしまっていて、あまり作劇として功を奏しているとは言い難いです。
まあ24時間以内に手に入れないと石になるとか、無限ループ回廊がある、武器を手に入れる組と子供達を助ける組に別れる、などは良いアイデアですが。


それから、今回一番頂けなかったのは被害者として巻き込まれたヒロシ少年へのメイのアドバイス。


「ダメ!ダメよ、泣いちゃダメ!泣いたら石になってしまう!」
「しっかりして!ママはきっと助かるから!希望を持つのよ!」


追い詰められて塞ぎ込んでいる子供にこういうアドバイスは絶対にしてはいけません、個人的にここでメイの好感度が下がりました。
これはまあコーチングやカウンセリングの経験値が足りない古代のお姫様だからといわれればそれまでですが、メイのアドバイスじゃそりゃヒロシくん石になるよねとは。
まず「ダメ!」という言葉遣い自体が子供を追い詰めてしまうことになりますし、更に「ママはきっと助かる!」「希望を持つ」というのはいかにも薄っぺらい綺麗事でしかありません。
ヒーローとは如何にして綺麗事を綺麗事として貫けるかが大事なのですが、だからこそその綺麗事に真実味や重みを持たせる必要があるのです。


メイが今回ヒロシ君にやったことは完全な失策であり、無根拠なポジティブシンキングほどタチが悪いものもないので、流石にこの一連の流れに乗れません。
それから子供が勉強しないから「勉強しなさい!」みたいな流れはこの当時だから成立し得た描写であり、今見直すと流石に普遍性がないというか古びてしまった描写です。
こういう「勉強したがらない子供を無理に従わせようとする教育ママ」は今の時代に見ると完全に毒親認定を受けてしまうので細心の注意を払って見る必要があります。
その1点だけを取っても、今回の話は無理に親子喧嘩などを絡めず、戦士たちが単純に試練をくぐり抜けるだけでよかったんじゃないかなあとは思いますが。


良かった点は守護獣たちが前回のティラノサウルスに続き 残りの4体も出てきたことですが、マンモスとタイガーは誰がどう見ても恐竜じゃない!(笑)


これは作り手が知らなかっただけなのか、それとも知っていて敢えて避けたのか真相は不明ですが、とりあえず守護獣たちを入れただけでも良かったかなと。
まあ中身が思いっきり現代のメカっぽい感じになっているのはなぜだか知りませんが、おそらく古代の恐竜文明は科学技術が発達していたに違いありません。
内容としてはなかなかに緊張感はあったものの、密度としてはいまいち薄く、総合評価はD(凡作)というところでしょうか。


第4話「甦れ伝説の武器」


脚本:杉村升/演出:小笠原猛


<あらすじ>
数々の試練を乗り越え、伝説の武器を発見したゲキたち5人。だがそこにバンドーラの邪魔が入る。果たして5人は伝説の武器を手にすることができるのか。


<感想>
「そんな殺生な!」


特撮番組で「殺生」なんて言葉をまさか聞くことになるとは思いませんでした(笑)今じゃ使わないもんなこんな言葉。
守護獣の「甘えんなボケ!」という厳しさが早速顔を出していますがこの程度はまだ序の口、今後もっと鬼畜な試練を課すようになります。
歴代でも屈指のブラック上司である守護獣たちですが、無能なガオゴッドよりはまあいいのかなあという感じではありますが。
でもなあ、同時代の「ドラゴンボール」しかりドラクエしかりFFしかり、フィクションにおける神様ってロクなのいないんですよね。


で、なんやかんやあって伝説の武器を手に入れるジュウレンジャーですが、せっかく2話かけた割には、武器入手はものすごくあっさりでした。


「聞け!伝説の武器たちよ、お前たちを得る資格を得た!違うのか!?」
「ならば……ならば目の前にいるバンドーラこそ、悪そのものだ!聞け!伝説の武器たちよ、バンドーラと戦わずして誰と戦うのだ!?来たれ、我が手に!」


たったこれだけの説得で伝説の武器たちが反応し、ゲキたちの元に来てしまいました^^;
変身後に「伝説の武器たちが1つになりたいと叫んでいる!」から察するに、伝説の武器たちにも意志はあるようです。
ただ、こんな安っぽい月並みの説得であっさり了承してしまう辺りちょろいというか、ちょっと過保護過ぎやしないですかね?
まあ守護獣たちがスパルタ過ぎるので、いわゆる飴と鞭みたいなバランスで、伝説の武器が飴なのかもしれません。


まあ流石に4話も引っ張っただけあって、今までのレプリカ品とは違い、生身でもゴーレム兵たちを余裕でぶっ倒せる強さではありますが。
それから、変身後にしっかり武器が玩具っぽく変化するギミックは本作のみではありますが、中々に凝っていて好きな設定です。
現在私が描いている「オメガレンジャー」でも取り入れている描写で、結構こういう変身前と変身後で変わる描写は好きなんですよね。
そして伝説の武器が合体したハウリングキャノンは5つの弓形バズーカ砲ですが……竜撃剣は添えるだけ!(by天才桜木)


いや、リアタイ当時から疑問だったのですが、他の武器が大砲の筒になるのは許せるとして、竜撃剣を載せる意味はどこにあるの?
まさか竜撃剣を上に載せないと発射できないとか?それならそれできちんと意味付けはして欲しいところです。
ちなみに一番今回のアクションで好きなのは変身後のタイガーレンジャーがダガーを無駄に回転させまくっているところで、あれは地味に凄いアクションでした。
そして伝説の武器を手に入れ、ひろしくんとお母さんを無事に助け出し試練を乗り越えたジュウレンジャー。


「これからはママの言うことを聞いてちゃんと勉強するんだぞ」


ゲキはしっかり子供を諌めるのですが……うーん、前回に続き、この親子のドラマは正直微妙だったので、素直にこのメッセージを受け取れません。
「ママの言うことを聞いて」というのは結構毒親がしそう、言いそうな言葉ですし、今の時代上の人たちがいうことなんて基本当てにならないので。
ただ、無意味だったかというとそうではなく、実は母親の涙で石化した子供が元に戻る描写があるのですが、これが地味な最終回への伏線になっています。
その意味ではこの親子を登場させたことにも意味があるといえ、総合評価としては何だかんだ伝説の武器を手に入れてからのアクションやカタルシスがよかったのでC(佳作)としておきましょう。


第5話「怖〜いナゾナゾ」


脚本:杉村升/演出:坂本太郎


<あらすじ>
ドーラスフィンクスのウルトラナゾナゾ大会で、ナゾナゾに答えられない子供たちが次々と木の中に閉じ込められてしまう。そして、ゴウシたちまでも!


<感想>
見所は知恵の戦士よりも知恵の戦士をしているヤマト族プリンス・ゲキ!(笑)


ゴウシさん、あなた知略でゲキで勝てなかったら一生ただの芋くさいおっさんでしかありませんぜ!


そんなことをついつい叫びたくなった今回の話ですが、大獣神前後編ということもあってか、これまでの東條監督・小笠原監督とはまた違った路線を坂本太郎監督が持ち込んでいます。
東映特撮で坂本監督というともう1人、女の足を取ることにしか興味がない浩一監督がいて、その方に比べると安心して見られますが、やっぱりこの人の本領発揮は浦沢脚本と組んだ「カーレンジャー」かなあ。
内容としてはここでまさかの物理攻撃無効ななぞなぞ対決という、心理戦を変化球として繰り出して来たというのは作風の変化が見られて斬新だったのだなあと。
今回の話で思い出したのは「幽☆遊☆白書」の天才・蔵馬と天才・海藤のタブーゲームだったのですが、そういえばこの時代そういうクイズやゲームものが流行った時代でしたね。


当時は「なぞなぞチェック100」という小さな100問のひっかけクイズを友達と出しあっていましたが、どうやらそこからヒントを得た模様。
特に「体の中に生えている木は?」「銀杏(胃腸)(いちょう)」などは単なるダジャレでしかないのですが、そういう遊び心満載のクイズが面白かったです。
で、ゴウシは一問だけ正解しましたが、後はほぼ全部ゲキが正解しており、他は全員答えられず……えーっと、恐竜人類ってまさか脳筋揃いだったりする?
本作の中で頭脳派担当は今の所ゲキとゴウシっぽいですがなぜこんなのでゴウシが「知恵」の戦士を名乗っているのかが全くわかりません。


まあ「頭がいい」と一言でいっても、それが学術的な「勉強ができる」「テストで点が取れる」という頭の良さか、「発想力が天才的」「閃きがすごい」といった意味での頭の良さか色々ありますからね。
そう思うとゴウシは前者でゲキは後者だと思いたい、というかそう思わないと説明がつかないですもんね……せめてゲキじゃなくゴウシが正解だったら面白かったのですが。
本作ってキャラわけがかなり大雑把で、今の所リーダー・ゲキ、サブリーダー・ゴウシ、トラブルメーカー・ダンはそれなりにキャラ付けができているものの、やはり全体的に見ると薄味です。
特にダンの好色スケベなキャラクターは今だと結構批判の対象になりそうなキャラなので、やっぱりこういう所はその世代じゃないと楽しめないだろうなあとも。


ただ、クイズ大会という頭脳合戦だったのに、最終的に「正義が勝つ!」「悪が勝つ!」という流れで単なる肉弾戦になってしまったのは話が分断してしまっていて残念。
頭脳バトルで通すなら頭脳バトルで一貫して描けばいいのに、ここで変に戦隊シリーズのフォーマットに流されてしまっているのはこの時代らしいといえばらしいのでしょうか。
そして前回のダンに続き、ゲキもまた守護獣から「甘えんなボケ!」と搭乗を拒否されてしまう展開であり、いよいよ守護獣が暗黒メンターの素質を出して来ました。
また、バーザは痴呆症が入っているのか「わからん」の一点張りでまったく役立たず……個人的にバーザは歴代屈指の無能司令官ではないかと思われます。


ゲキだけが悪夢を見るなど色々ありますが、クイズそのものは悪くなかったものの、森林伐採ネタなど諸々の要素がうまく噛み合っておらず、ちゃんと物語としての結びつきが欲しいところです。
こうして4人とも木の中に囚われてしまい絶体絶命のピンチに陥ったジュウレンジャー、果たしてどうやって大獣神合体まで持っていくか?
総合評価はE(不作)、どうにもネタを切って貼っただけで終わってしまい、物語としての連動性が薄くなってしまっています。


第6話「立て!!大獣神」


脚本:杉村升/演出:坂本太郎


<あらすじ>
伐採が子供たちの木に迫っていた。一方、巨大化したスフィンクスとグリフォーザー。いまこそ守護獣合体のときだ。走れ、ダイノタンカー!発動、大獣神!


<感想>
ティラノレンジャー「ダイノクリスタルはどこにあるんだ!?」
竜撃剣(しょうがねえな、教えてやるよ。オラ!)
ティラノレンジャー「あそこか!!」


竜撃剣さんあんたジュウレンジャーに甘すぎじゃないですかね?(笑)


えーっと、前半の「ゲキとしてのリーダーの資質」云々は何だったのか、さっぱり意味がわからない後編となっています。
これなら素直にダイノクリスタルを前編で出してダイノタンカーを活躍させ、後編で大獣神初登場という流れにした方がよかったんじゃないでしょうか。
何せダイノタンカー→大獣神と矢継ぎ早に繰り出しているせいで、ダイノタンカーという形態が全く印象に残りません。
そう思うと、前作「ジェットマン」が最初にイカロスハーケンを繰り出し、後半でジェットイカロスにしたのは意味があったのだなと思います。


また、ダイノクリスタルのデザイン自体がクリスタルというよりもプッシュポップのような棒型の飴玉にしか見えないため、そんなにクリスタル感がないのが苦しい。
おそらく構成の意図としては4人が足並みを乱したことがリーダー・ゲキの管理不行き届きということにしたいのでしょうが、全然物語の流れがそんな風になっていません。
チームワークを乱したのは勝手に突っ走って墓穴を掘ったダンくらいで、あとは全員クイズを答えられなかったことから来る失敗であり、ゲキの責任とは全く関係ない流れです。
まあ強いて言えば、ゲキのリーダーとしての責任は「全員が木に埋められる前に自分が代表でクイズに正解する」という手段を講じなかったことくらいでしょうか。


とはいえ、クイズの解答者は基本的にドーラスフィンクスが選んでいたのでゲキが自主的に代表して答えるという展開にも出来なかったので、ゲキの責任ではありません。
それを全部ゲキの不始末とする大獣神の言っていることはブラック企業の社長レベルの理不尽な言いがかりであり、しかも絶望の未来まで見せてくるという始末です。
杉村戦隊って「ダイレンジャー」の導師しかり、「カクレンジャー」の三神将然り理不尽な要求をするイメージがありますが、大獣神はその中でも間違いなく典型的なブラック上司(笑)
合体ロボのデザインや雷光斬りはかっこいいものの、そこに持って行くまでの流れがどうにもチグハグかつ詰め込みすぎで、あべこべな構成になってしまっています。


森林伐採が始まっている中でのクイズというのは変則的かつ緊張感があって面白かったのですが、逆にいえばそこ以外はあまり面白みがありません。
最終的にドーラスフィンクスが頭の蛇が弱点で「かかったな!」みたいな流れも、その前にジュウレンジャー側が墓穴を掘ったので、寧ろマッチポンプでしかないという格好に。
全体的にやらかしが多いジュウレンジャー5人ですが、一番ダメだったのはそんなゲキのピンチにいまひとつ役立っていない痴呆バーザなのですけどね。
総合評価は前回に続いてE(不作)、とりあえずバーザと大獣神は今すぐシルバースター乗馬倶楽部に行って有能かつ人格者の知恵の樹・モークに弟子入りして来なさい。

 

評価基準=S(傑作)A(名作)B(良作)C(佳作)D(凡作)E(不作)F(駄作)

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