『救急戦隊ゴーゴーファイブ』(1999)1〜6話感想まとめ

 

第1話「救急戦士!起つ」

第2話「竜巻く災魔一族!」

第3話「爆破された兄弟愛(きずな)!」

第4話「花びらに異常気象」

第5話「ヒーローになる時」

第6話「カビが来る!」

 


第1話「救急戦士!起つ」


脚本:武上純希/演出:小中肇


<あらすじ>
隕石がビル街に落下し、大規模な火災が発生した。それを受け巽兄妹のマトイ、、ナガレ、ショウ、ダイモン、マツリの5人が数年ぶりに同じ現場に揃い、それぞれの役割を全うした時に裁可した。するとその隕石から巨大な怪物が出現し5人を攻撃し、気絶させてしまう。意識が回復した5人はいつの間にか自宅に戻され、目覚めると10年前に失踪したはずの・モンドがアナライズロボ・ミントを通して連絡を取ってきた。モンドはその隕石の原因が惑星が十字型に並ぶグランドクロスによって生じたものだといい、10年もの間来るべき戦い備えレスキュー基地ベイエリア55を建造していた。5人はモンドの命令に従いゴーゴーブレスを装着させる。


<感想>
さて、「ギンガマン」を書いたので次は「ゴーゴーファイブ」に取り組もうかなと…前作「ギンガマン」が大変な人気作だったこともあり、本作がどうそのプレッシャーと戦ったのかも見ものです。
第一話の感想をガッツリ書いていくと、何となく「ウルトラマンA」の第一話を彷彿させる始まり方で、もうわかりやすく「特撮!特撮!特撮!」という感じの構成になっています。
歴代で見ても、こんなに特撮一色のパイロットも珍しく、いわゆる「救急」という側面だけをフィーチャーしたような始まり方は今見てもすげえ凝ってるなあと思うのです。
まあ前作のパイロットがあまりにもドラマとしての完成度が高すぎたので、同じ方法で勝負しても勝てないと判断して全編特撮という思い切った構成にしたのでしょう。


少なくともこの段階ではまだマトイ兄さんたちのキャラクターは掴めませんが、それでも5人全員揃った時に「兄妹」にしっかり見えるというのがいいなと。
兄妹戦隊・家族戦隊というと他に「ファイブマン」「マジレンジャー」、それから「ニンニンジャー」もそうなんですが、「ゴーゴーファイブ」はそのいずれとも違うんですよね。
「ファイブマン」は何というか「兄妹」というよりも「同居人」「同僚」っぽく見えましたし、「マジレンジャー」「ニンニンジャー」の兄妹描写ってなんか家族っぽいですし。
その点ゴーゴーファイブの5人は本当に現実に居そうな兄妹って感じなのがとても良くて、特にマトイ兄さん、ショウ、ダイモン辺りのような普通っぽいビジュアルのやつがいいと思うのです。


まだこの段階だと見せていませんが、マトイ兄さんって歴代でも「熱い」を通り越した「暑苦しい」レッドで、西岡竜一朗氏の性格がそのまま反映されているのもありますが、決してビジュアルはイケメンじゃないです。
少なくともギンガレッド・リョウマやタイムレッド・浅見竜也のような好青年タイプとはまるっきり違うのですが、まあ確かにリョウマほど完成度の高いキャラクターに対抗しようと思ったらこういう系統しかいません。
しかも、だからと言って00年代戦隊のトレンドになってくる「バカレッド」とも違っていて、暑苦しいけれども知性や判断力はそれなりにあるというのがポイントが高いんですよね。
ただ、この段階だとマトイ兄さんに限らず他の弟たちはもちろんモンド博士まで含めて、キャラクターがつかめないから第一話を見た限りの印象だと掴みとしては及第点といったところ。


その上で個人的に笑ってしまったのが、役者さんたちもネタにしていましたが、救助活動でのピンクのセリフ。


「びるどでぃすちゃーじゃー!!」


救助活動用ツールのライフバードの部品の1つ「ビルドディスチャージャー」なのですが、ここの柴田かよこ氏のアフレコの棒読み感が酷い(笑)
よくこんな下手さでGOサインが出たなあと思うのですが、めちゃくちゃ緊迫した救助活動のシーンの中で、思わぬ笑いをピンクがくれました。
この時点で演技がまともに成立しているのがレッド、グリーン、そしてモンド博士くらいなのでこの時は特にブルー、イエロー、ピンクの演技の下手さに参ってしまいます。
まあそれでも「ジュウレンジャー」のメイ役の千葉麗子に比べたら全然マシな方ですけどね。


そして今回の見所は何と言ってもミニチュアでの特撮シーンで、ゴーライナーの運搬、救急マシンでの活動シーン、ビクトリーウォーカーにビクトリーロボと見せ場が贅沢にあります。
特に下半身だけで動くビクトリーウォーカーはよく考えたなあと思いますし、さらにそこからビクトリーロボに合体させる時もグリーンのホバーを使って合体させるのが面白い。
途中で敵が邪魔してくるところもリアリティある演出を目指したのでしょうが、リアルメカの合体シークエンスとしてはよくできているのではないでしょうか。
5人のキャラ紹介や敵組織ではなく、災害救出のドキュメンタリー映像を見ているような感覚で、評価としてはB(良作)といったところです。


第2話「竜巻く災魔一族!」


脚本:武上純希/演出:小中肇


<あらすじ>
宇宙から飛来してきた隕石は冥王ジルフィーザ率いる災魔一族による奇襲だった。戦いを終えたマトイたち5人が家に戻ると、勝手にモンドから確実の職場に退職届が提出されてしまう。そのことをマトイたちは問い詰めるのだが、モンドの天才ゆえのマイペースさにはぐらかされてしまうが、そんなことを気にする余裕もない次の災害が襲ってくる。巽家に突風とともに竜巻が発生し、マトイたちは救助活動へ向かおうとする。すると、そこでジルフィーザの幻影が姿を現し、人類に対して宣戦布告をかましてきた。マトイたちは果たして、この未曾有の侵略者相手に戦うことができるのだろうか?


<感想>
今回の見所は一人で勝手に名乗りを上げているマトイ兄さん(笑)


「人の命は地球の未来!どんな危険も厭わない…世界の平和を心に誓う、燃えるレスキュー魂!救急戦隊!ゴーゴーファイブ出場!」


ここでポカーンと息巻いている弟たちと妹に笑ってしまうのですが、このワンシーンだけで巽兄妹の関係性が何となく伺えてしまうのが大変面白いところです。
ああ、きっとこの兄妹はマトイ兄さんが猪突猛進に突っ走ってしまい、弟たちはそんな兄の暴走機関車ぶりについていけないというか、「また始まったよこいつ」って感じなんだろうなと。
歴代戦隊で名乗りのシーンってすごく大事ですが、そういえば前回はただ「スーツを着て救助活動しただけ」で「戦隊として戦った」というわけじゃないんですよね。
だからこそのこの名乗りなのですが、もしかしてマトイ兄さんって常日頃からこの名乗りをシミュレーションしてたのかなあ?


で、ドラマ的な見所はまだ少ないのですが、冒頭のシーンで描かれているのがモンド博士の身勝手さであり、歴代で見ても割と「どうなの?」と思うシーンです。
10年も姿を消して戻ってきた挙句5人の職場に勝手に退職届を出し、一方的にゴーゴーファイブに任命という、戦士になったきっかけとしてはかなり稀有なパターン。
ここは非常に注目すべきところなのですが、「ゴーゴーファイブ」が異例なのはそれぞれが救急のプロでありながら、戦士の任命自体に明確な理由がないということです。
なぜゴーゴーファイブがこの5人でなければいけなかったのか、実は明確な根拠や基準に関しては示されておらず、また5人がそれぞれの職場でトップクラスの隊員というわけでもありません。


この辺り、前作「ギンガマン」とは大きく違うところで、ギンガマンの5人はギンガの森という過酷な選抜競争を勝ち抜き、実力第一で選ばれた者たちでした。
歴代で見ても突出して高い使命感と戦闘知能を発達させた民族なのであり、第一話から生身でも普通に戦えるプロ中のプロです。
本作はというと、翻ってプロでありながら合理的な理由もなく偶然にこの5人が選ばれたというパターンで、自発的なものというより完全に一方的な選ばれ方でしょう。
まあそもそも武上氏がメインライターを務めた戦隊は「メガレンジャー」「ガオレンジャー」「ゴーオンジャー」のいずれもが偶然に戦士に選ばれたというパターンなのですが。
ただまあ確かに見知らぬ5人を任命するよりは兄妹5人の方がやり易いというのはあるでしょうけど…。


アクションシーンの方はというと、基本武装が銃と剣ではなく銃と警棒なのが異色で、バルカンスティックの系譜かと思われますが、今見てもかなり異色です。
ライフバードの必殺技「カラミティブレイカー」は好きなんですが、ただゴーレッドが無人の車に勝手に乗って突撃しているのはヒーローとしていただけませんね。
あとは巨大戦で倒しておしまいというところですが…うーむ、映像的には見応えがあるものの、どうしても5人のキャラクターと関係性が表面的にしか見えないのが惜しいところ。
「救急戦士」というコンセプト自体は大好きなものの、肝心の5人のキャラクターがまだ表面的にしか見えないので、物語的要素が薄めなのはやや乗りにくいです。


まあ戦隊シリーズに限らず特撮作品は第一話を勢いで見せて、第二話以降で徐々に説明というパターンが多いのですが、本作はまさにその典型と言えるでしょう。
現状でキャラクターが比較的立っていると言えそうなのがマトイ兄さんとモンド博士くらいで、あとの4人はこの段階だとまだ影が薄いです。
後々宮下隼一氏や小林女史も参戦してくれるので、もっと面白くなっていくのですが、滑り出し順調とはいかない低空飛行な感じがしてしまいます。
ここからキャラクターやストーリーが膨らんでいくことを期待して、評価は厳し目にC(佳作)といったところです。


第3話「爆破された兄弟愛(きずな)!」


脚本:武上純希/演出:渡辺勝也


<あらすじ>
災魔一族はゴーゴーファイブを倒すために爆発弾サイマ獣ガスガイルを送り込んだ。一方、巽家にはショウの先輩の京子が先日助けてもらったお礼を言いに来る。そこにサイマ獣出現の報せが入り、ゴーゴーファイブが救出活動に当たったが、マトイ達が戦闘員達を相手していた間にナガレと2人で行動していたダイモンが先走って敵の罠にハマり負傷してしまう。マトイは幼少期にも同じようなことがあってナガレを強く糾弾し、ナガレは責任を感じて1人で釣りへと出てしまった。そこでナガレは父のモンドから忘れかけていた思い出の疑似餌を見る…果たしてナガレはもう一度ゴーゴーファイブとしてやり直せるのだろうか?


<感想>
2話目を経ての3話目ですが、今回はナガレとダイモンの話で、レッドメインで来るのかと思いきやブルーとイエローという変則的な構成になっています。
この辺りは前作でもハヤテとヒカルがやっていましたし、「メガレンジャー」でも健太と瞬がそういう話を展開していたり…思えばこの時代の戦隊って2番手と未熟者との絡みをよくやってた気が。
内容としては…うーん、やっぱり前回に続き及第点というところで、まあまあいい線は行っているものの、もうちょっとで痒い所に手が届いていないなあとは思いました。
まあ武上脚本ってドラマ自体は月並みですからねえ、中身としてはいわゆる「ありがちな兄弟喧嘩」の領域を抜け出るものにはなっていないので、イマイチ広がりがない。


ポイントとしてはナガレ1人をやたらに強く糾弾するマトイ兄さんでしょうか…個人的にマトイ兄さんを好きになれないのはどうしてもこの横暴な感じですね。
今回の話だってもっと冷静になって話をきちんと聞けば、ナガレだけが悪いわけじゃないことは明白なんですが、マトイ兄さんは話をあんまし聞こうとしないでしょ?
13話なんかは非常にわかりやすくマトイ兄さんの話が掘り下げられていますけど、こういう人が長男だったら私は嫌だなあなんて思ってしまいます。
私も兄と弟がいる家庭で育ったので、ちょうど中間子として育ったこともあり、マトイ兄さんよりはナガレやショウの目線で物語を見ることが多いんです。


そういう目線で見たときに、マトイ兄さんは救急戦士としては一流かもしれないけど、人間として、兄としてはどうなんだろう?と思うことがあります。
前作のギンガレッド/リョウマと比較して叩かれることも多かったそうですが、まあ確かにこんなキャラ付けではなあと…生まれ育ちでそうなったと言えばそうなんですが。
でもまあ、そんなところを飲み込みつつ、最後にはきちんとマトイ兄さん自身が戻ってきたナガレを認めるくだりがよかったと思います。
特に「遅いんだよ!」っていうところの柔らかい目つきと表情は役者の演技とナベカツ演出がうまくかみ合ったところではないでしょうか。


それから今回はアタッカーポンドが初登場なのですが、これもゴレンジャーのバイクとサイドカーの奴ですけど地味なんですよねこれ。
なんのために出てきたのか良くわかりませんが、ラストは立ち直ったダイモンが自分に非があることを認めて、マトイとナガレが和解しておしまい。
で、これで終わるのかなあと思いきや、なんと父・モンドは戦闘中に釣りに行った挙句にナガレの疑似餌をなくしてしまうという(笑)
初期のモンドはどっかやる気がなさげな気怠い感じを出しているのですが、これもまあ演出というやつでしょうか。


ゴーゴーファイブの面白いところはダメ人間率が結構高いのに、何だかんだ役者の演技力でそれをねじ伏せているところだと思います。
特にマトイ兄さんやモンド博士なんて人間性にはめちゃくちゃ問題があるのに、役者の演技力でそれを納得させているんですから。
まさにはまり役というか、他の誰がマトイとモンド博士を演じてもこの説得力は出ないと思うので、そういう意味でも非常にいいキャラ。
総合評価はB(良作)、今の所まだ突き抜け切れてないけどそこそこにまとまっているかなと。


第4話「花びらに異常気象」


脚本:宮下隼一/演出:渡辺勝也


<あらすじ>
10年ぶりに帰ってきてもなお暴君の如き振る舞いをするモンドに対してマトイ達男性陣はすっかり呆れ果てていた。そんな兄達を見てマツリは「10年ぶりの再会なのにそんなに悪く言うなんて」と家を出ていってしまう。一方災魔一族はドロップの生み出した暗黒魔剣サイマ獣ソルゴイルを地球に送り込み、異常気象を発生させる作戦を目論んでいた。そんな中マツリは病院勤務時代に担当していた患者の高部と名乗る男性と再会する。「どんなに離れていても家族の幸せを考えている」と語る高部にマツリは父の姿を重ね合わせるが、その時異常気象の派生によって病院の患者達が次々と体調を崩し始める。マツリは果たしてこのピンチをどう乗り切るのか?


<感想>
今回はマツリメイン回ということで、メタルヒーローシリーズより宮下隼一氏が参戦。そう言えばマツリメイン回は割と宮下脚本が多かった気がします。


前回同様まだゴーゴーファイブというヒーロー像自体はきちんと確立されていないのですが、とてもよかったのは初めて父親のモンドをマツリがきちんと庇ったこと。
流石にずっとこのままモンドが悪者扱いされ続けるのは良くないということで、母親の役割も兼任しているマツリが兄たちに反発するのは兄たちにとって影響が大きいのではないでしょうか。
個人的にはマツリって歴代でも結構好きなヒロインなんですが、その「好き」の意味合いはいわゆる「巽兄妹の末っ子」という妹の立場といった限定的な属性が大きくあるんですよね。
前作のギンガピンク/サヤの反省を受けてのことなんでしょうけど、マツリに関しては今回ですっかり献身的な女性らしい女性という立ち位置を物にしています、役者の演技力はアレですが(笑)


ただ、だからといって決してマトイ兄さんたちがモンド博士を蔑ろにしていたわけではなく、むしろ心配していたからこそアレだけの不満が噴出するという持っていき方がよかったところです。
特にマトイ兄さんは2話といい3話といい暴走癖が凄くて、視聴者の好感度がマイナスに行きかねない危ういさじ加減のキャラですから、ここでそれを軌道修正していました。
また、今回はそれに限らず、マツリと依田英助演じる高部氏のキャラクターやドラマともリンクさせていて、「離れていても家族を信じる」というのは月並みながら好きです。
本作はあんまり人間関係のドロドロは深く描かない方針のようですが、子供向けとしての範囲を守ろうとすると、いわゆる昼ドラのような展開にはしにくいんでしょうね。


内容的にはもう少しドラマを肉付けしてくれたらよかったかなあとは思いますけどね、なぜこのおじいさんが退院まで家族と離れ離れだったのかを掘り下げるべきだったかと。
この辺りはやっぱり後進の作家である小林女史の方がもっと丁寧にその辺りできると思うので、今の所はとりあえず兄妹たちのキャラクターの基礎を固めておこうというところでしょうか。
そして相変わらずモンド博士はというと、たこ焼き屋のお手伝いをしていたので兄妹たちからは飽きられたという落ち…うん、モークの葉っぱでも煎じて飲みなさい!
うーん、やっぱりどうしても立ち上がりの段階でまだキャラクター像がしっかり確立しきれていないのは厳しく、今見直すとかなりのスロースターターだなあゴーゴーファイブ。


前作「ギンガマン」や次作「タイムレンジャー」は割と早い段階でキャラクターの基礎を確立させていたので、その点本作はまだ特撮のレスキューシーン以外での魅力がまだ見えない感じ。
あとはここからどれだけキャラを掘り下げていけるかにありますが、マツリのキャラ自体はこの回でしっかり立ったと思うので評価はB(良作)でしょうか。


第5話「ヒーローになる時」


脚本:武上純希/演出:長石多可男


<あらすじ>
災魔一族は大地震を起こしてダムを破壊し首都をゴーゴーファイブごと潰すことを計画し、そのために地震サイマ獣クエイクロスを生み出す。一方マトイは黒鷲山で行方不明者が続発していることから単独で調査に向かおうとしていた。そこになぜか巽家を訪れた京子までが野次馬根性で勝手に同行することになり、2人で山の様子を見に行くことに。黒鷲山に来ていた少年・達也は目の前で父親をインプスに攫われてしまい、クエイクロスに飲まされた種で人間樹に変えられてしまう。果たして達也少年は父親を無事に救い出すことができるのであろうか?


<感想>
今回は2話から地味に登場していた宮村優子演じる速瀬京子先輩と子供キャラクターの絡みという変則回。
ここまで来てもまだマトイ兄さんのメイン回がやってこないことが意外でしたが、歴代で見てもマトイ兄さんって意外とスポットが当たる回は遅いんだなと。
今回の話も京子先輩とたまたま一緒に行くことになっただけで、メインはあくまでも達也少年と京子先輩でしたし…まあそれでもそこにいるだけで存在感があるのは凄いんですが。
ただなあ、こういう「ヒーローと民衆」というテーマに関しては前作「ギンガマン」までの高寺P戦隊がガッツリやったこともあって、評価としては正直物足りないですね。


京子先輩が活躍してくれるのはいいんですし、気弱な少年が活躍するのもいいんですけど、前作では青山勇太君がそれを1年間の積み重ねでやっていたので、非常に物足りないというか。
勇太くんなんて序盤の段階で星獣からもらった石を投げつけてバルバンの作戦を邪魔するという大活躍を見せていましたし、しかもリョウマたちと世間とをつなぐ狂言回しでもありました。
そういうのをしっかり見ているだけあって、どうしても少年キャラで勇太くん以上のキャラクターを見せてくれないと、こっちとしては満足できません。
しかも、ただ少年が活躍するのではなく、それをギンガマンのヒーロー像の肉付けとも無駄なく連動させていましたから、その意味でも良くできているというか。


敵が起こす作戦もまどろっこしいというか、大地震を起こすためにわざわざ山にやってきた違う星座の人間を5人も浚うという展開は回りくどいというか、効率悪くないですか?
それこそバルバンなんて地面に針を刺して刺激するだけで簡単に地震起こしてましたし、環境破壊とか酸性雨とかやってることはかなりデタラメでしたからねえ。
そういうのを軽く起こせてしまうバルバンを見た後で災魔一族が大掛かりな作戦を展開してるのを見ると「なんか無駄なことやってんなあ」って気持ちにさせられてしまいます。
やっぱり本作って設定とキャラ、ストーリーがまだがっちり噛み合っていないというか、シリアス路線なのはいいんですけど、やっぱりそこかしこで詰め不足が出ているんですよね。


登山家の皆さんが元に戻る最後の描写にしても、そもそも連れさらわれる描写がないせいで幾分唐突に見えてしまいましたし、後はやっぱりまだゴーゴーファイブのヒーロー性がまだきちんと確立されていないのが難点です。
こういう風にサブキャラ、セミレギュラーキャラを活躍させたいのならば、その前にまず基本となる5人のヒーロー像をしっかり確立することが先決だと思うんですよ。
私は基本的にヴィラン側ではなくヒーローサイドを中心で見てしまうので気になるんですけど、あくまでも5人のキャラクター像が確立してからセミレギュラーやサブキャラの活躍を描きべきです。
そこを描かずにいきなりサブキャラクターを活躍させてもそれは基礎ができてない段階でいきなり応用技をやるようなもので、この段階で描くのはまだ早いかなと。


それにサブキャラクターが過度に活躍しすぎると、ゴーゴーファイブの沽券に関わるようなことにもなりかねないので、今回は二重に微妙な感じでした。
評価はE(不作)、1エピソードとしてはまあまあのまとまりではあるものの、序盤の立ち上がりでやるような話ではなかったかと思います。


第6話「カビが来る!」


脚本:宮下隼一/演出:長石多可男


<あらすじ>
いつも通りレスキュー活動にあたるゴーゴーファイブだったが、ショウは家族で長男という理由で何でもかんでも自分中心に仕切るマトイに対して少し反感を持っていた。すると、首都消防局航空隊からショウをアルバトロスチームのチーフパイロットに迎えたいという手紙が来る。父・モンドはゴーゴーファイブの任務を優先しろとその誘いを断るように仕向けるが、そういう家族の意向に嫌気が指したショウは怒って家を飛び出して行ってしまう。一方で災魔一族は人間が作り出したXXXなる物質を狙い、溶解液サイマ獣ジェルーダを送り込む。家出してしまったショウを引きとめようとするが、果たしてこじれた人間関係は修復できるのであろうか?


<感想>
さあ、やってきました、前作「ギンガマン」で猛威をふるった小林靖子がいよいよ本作に初参戦、この回から「ゴーゴーファイブ」という作品が輝き始めます。
思えば「メガレンジャー」も16話から面白くなり始めましたし、やっぱりこの時代の小林女史は頼れるエースというか、やっぱり一味違う切れ味を見せてくれますね。
内容はショウメイン回なんですが、私自身が家庭の中で中間子として育ったこともあってか、今回の話はもろに共感してしまいましたねえ。
たった1話でありながら、凄まじい情報量が詰め込まれていて、ショウのキャラ立てはもちろんのこと「ここまでやるのか!」という位に世界観が拡張されました。


内容的には「航空隊のパイロット=私」を取るか、それとも「ゴーゴーファイブとしての使命=公」を取るかという話なのですが、それだけではなくショウのキャラクターのバックボーンも描かれました。
航空隊のチーフパイロットに行きたいという気持ちを勝手に無視して「お前にはゴーゴーファイブとしての使命があるだろう」というマトイとモンドに対するショウの文句が炸裂します。


「いい加減にしろよ!いくら家族でもなあ、遠慮ってもんが必要だろうが!親父も、マトイ兄も、仕事と家を一緒にしすぎて、ケジメがなくなってんだよ!これだから家族と一緒にするのは嫌なんだよ!」


今回のこのセリフは私も思いっきり頷いてしまったのですが、思えば小林女史の家族観ってあんまりいいイメージを持ってない気がするんですよね。
例えば「ギンガマン」でも第一章でいきなりリョウマとヒュウガが引き裂かれるところから始まりますし、次作「タイムレンジャー」なんて1年通しての壮大な親子の確執を描いています。
また「シンケンジャー」でも各家庭の人間関係はギクシャクしていましたし、「ゴーバスターズ」なんて家族がとっくに死んでいるという…「トッキュウジャー」位かなあ、家族を肯定的に描いたの。
まあその「トッキュウジャー」ですら、最初は家族と離れ離れになる予定だったそうですから、小林女史はどこかそういう「家族の絆」を胡散臭いと思っているんでしょうね。


実際これは「ファイブマン」「マジレンジャー」ではあまり表立って描かれませんでしたが、家族同士だからって必ずしも仲がいいとか相性抜群とかいうわけじゃないんですよ。
むしろ私なんて5年間も親と一緒に仕事していた影響で、もはや仕事と家庭の境目がどんどん怪しくなって、かえって親子の情愛ってものが薄れていった感じがあります。
これは同時に同族経営がうまくいかない理由にもなっていて、同族経営ってどんなに頑張ってもよほどのことがない限り3代目までで潰れる傾向にあるんですよ。
本作の場合はそれぞれが別々の職種に就いていたからいいものの、いざゴーゴーファイブとして組むに当たって距離感を見失っている部分もあるでしょうし。


その後、家出したショウが家に戻ろうとすると、マトイたちはショウのために「パイロット募集」と次のゴーグリーン候補を探すのですが、これがまたショウの怒りを再発させる結果に。
ダイモンの「ゴーゴーファイブじゃなくゴーゴーフォー」「自分だって忘れてたくせに」といった台詞回しも秀逸で、ショウの家出を通して巽兄妹の関係性がたったこの数分で形成されました。
特に「ゴーゴーフォー」の名前に笑ってしまい、私はリアルタイムで見ていた時「これ6人目が出てきたらゴーゴーシックスになっちゃうけど、どうするつもりなんだろう?」と思ったものです。
そのツッコミを自らすることでフォローしつつ、これまで設定のみであまり表面化しなかった巽家の兄弟喧嘩や衝突をしっかり描いてきたのは高く評価できます。


そして航空隊とショウのやり取りのシーンが描かれるところでは、ショウの人間関係が「家族」だけではなく「職場」にも拡張されており、世界観に広がりが出ました。
そこで今回はカビ防止用のXXXを災魔一族が狙ってくるという話なのですが、ここもやはりひねりが効いていて、自分から災害を起こすより人間の科学兵器を利用した方が楽だというのは合理的です。
そのカビ培養を使って職場が一気に汚染されるシーンは軽いB級ホラーテイストに仕上がっていて、ショウの夢やバックボーンがここできっちり描かれたことで広がりが出ています。
また、ショウが必死に食い止めている間にゴーゴーフォーが災魔一族相手に頑張ることで、アクションのスタイルにもうまいことバリエーションが生まれました。


そしてここでショウの価値観が改めて「パイロットになること」ではなく「兄弟全員で人々を救うこと」というところにうまいことひねって着地。
これにより、ショウのキャラクターだけではなく「ゴーゴーファイブがどんなヒーローなのか?」という芯が一気に形成され、あくまでも中心に「兄妹で一緒に助け合うこと」をあぶり出しました。
どうしても武上脚本や宮下脚本だけだとそういう家族戦隊の描写の触りの部分だけで終わってしまいがちなのですが、小林脚本だとさらにもう一歩突っ込みつつ要点を押さえたキャラ描写が光っています。
そして最後にはモンド博士がショウにゴーゴーブレスを渡し、改めてショウ自身の意思でゴーゴーファイブになる決意をもって「真のゴーグリーンになる」というフェイズが描かれたのも秀逸です。


ラストはいつも通りモンド博士がやらかす落ちなのですが、これまでだと単なる「ダメ親父」だったのが、小林女史が描くとその中に人間味がある感じになるから不思議です。
マトイ兄さんも横暴さは残しつつ、兄妹たちの意見を受け入れてという感じでしたし、各キャラクターの芯を押さえつつ、無理なくロジカルに展開してくれるのがいいところですよね。
よく小林脚本はキャラを追い詰めるとか言われますが、そうじゃなくてそのキャラクターの根っこにあるものを炙り出して、そこからヒーロー像の構築につなげるのが上手な方です。
これまで藪睨みのように今一歩痒いところに手が届かない話が続いていた本作もこの話で一気にキャラクターと世界観が立体的になりました。


ゴーゴーファイブとはどんなヒーローか?」をショウの家出を通して確立し、その上で世界館の拡張からショウのキャラ立ちまでしっかりやり遂げています。
やっぱ小林脚本といえば後期の「シンケンジャー」あたりもいいけれど、なんだかんだこの「ギンガマン」「ゴーゴーファイブ」「タイムレンジャー」の3年間だなあと。
この頃が最も面白かったんですよね、今には感じられない新鮮さがあるので。評価はA(名作)、ここから本格的に「ゴーゴーファイブ」は面白くなり始めます。

 

評価基準=S(傑作)A(名作)B(良作)C(佳作)D(凡作)E(不作)F(駄作)

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